今回は、お笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんがモンゴル国立サーカスを訪ねるという内容だった。
モンゴルといえば、広大な草原と放牧のイメージが強い。けれど、1990年に民主化されて以来、都市部分は綺麗に整備された道にろいろな建物が建ち並ぶ等、近代化が進んでいる。その事が、昔からモンゴルの誇りの一つとされてきたモンゴル国立サーカスの存続を危ぶませることになっているらしい…。娯楽のあまり無かった時代、サーカスは、人々の楽しみであり明日への活力でもあったのだろう。けれど、発展と共に、ハリウッド映画やDVD、インターネット、ディスコ…人々が夢中になる娯楽も増え、それに比例するように「モンゴル国立サーカス」は、人々の娯楽の場から遠ざかろうとしている。現在では数ヶ月に何度かしか公演も行われない。素晴らしい技。人から人へ、それを愛する者たちが厳しい訓練や鍛錬の中でしか受け継がれることのない見えない伝統。
発展と衰退は背中合わせにしか存在できないものなのだろうか?
とはいえ、庄司さんと同じく、私もモンゴル国立サーカスを知らなくて、ましてどれだけトップレベルの技を持ち、世界に多数の優秀なサーカスメンバーを送り出してきたか、ということは全くもって知らなかった。
本人も肉体派という取り柄=割れた腹筋と運動神経が自慢?といいながらも、その技の凄さに圧倒されてしばし絶句。でも、サーカス団では、どうやら、庄司さんにモンゴルサーカスの宣伝をしてもおう!と計画していたらしい。コーチ役のボルドさんは、言われるままに馬に乗り、言われるままに走る馬上で両手を離した庄司さんの運動神経には、かなり期待をもったようで、結局数ある演目の中から、馬の曲乗りを選んだ。
私は馬に乗った事がないので、馬上で両手を離すという事がどれほど凄い事なのかは分からないけれど、会場の人々が口をそろえて感嘆していたので、とても難しい事なのだろう。
実は、庄司さんのイメージ…正直…あまり良いものではなかったりして…(ごめんなさい) でも、ウルルンでの彼を見ていると、とても素朴で素直で優しい人だなぁって思った。子供たちと遊んでいる所や、コーチであるボルドさん一家と過ごす日々の様子。ひたむきにもの凄く一生懸命に、馬の曲乗りに取り組んでいる姿は、本当に心を打たれる。ウルルンを見るたびに思う。どうして、この人たちは、こんなに一生懸命にひたむきにそして素直にいろんな事に取り組めるのだろう…って。
いつもテレビで見ている庄司さんからは、絶対に想像できない
「あぁ、悔しいな。」
というつぶやき。たった一週間の間だ。出来なくて当たり前なのに、彼は何度も呟いていた。
どうしても体に力が入ってしまう庄司さんを、ボルドさんは草原での乗馬へと連れ出す。そこで、彼が見たのは、ほんの3〜4歳の子供が、馬の背にいともたやすく腰掛けて、馬の歩く上下の揺れにただ無心に身を任せ、ちょこんと乗っている姿だった。
「そういうことか…あんな小さな子でも、乗ってるんだもんな…」
「体に力が入っていると言うことは、馬を信じていないと言うことだろう? 馬を信じていないのに、馬が人間を信じるわけがない。」
とボルドさん。
その子供を見つめながら何度も頷く庄司さん。子供の頭を撫でながら、
「君のお陰でやっと分かったよ。ありがとな。」
と。それはモンゴルでは当たり前の風景。その何でもない風景から、何を感じ取るか…それはその人の力量でもあるんだと思う。感性でもあるのかもしれない。小さな出来事、何気ない風景、当たり前の時間。そんな中から、自分なりの何かを感じ、吸収出来るってすごく素敵なことだ。
その後の練習で、庄司さんは本当に綺麗に曲乗りの技が出来るようになっていた。凄い…。サーカス団の人々も、歓声と拍手で湧いた。ボルドさんの嬉しそうな笑顔が蘇る。本当に…なんて素直で気持ちのしっかりした人なんだろう…。
本番の前日、ビラ配りをしながら、
「明日サーカスがあります。友達と見に来て。僕も出るから。綺麗な女の人がいると嬉しい!」
と、冗談?まじりに声を掛けていた。その甲斐があって、思っていたよりも沢山の人が見に来てくれた。そんな中で、本番が始まる。順番の入れ替えが上手く伝わっていなかったりで緊張と興奮がごちゃごちゃになってしまった。それが逆に彼のテンションをあげたようで、何度も気合いの声を発していた。団員の一人が
「これは昔から成功のお守りとして大切にされてきたものなんだ。」
と馬のくるぶしの骨を、庄司さんにくれた。初めは日本の芸人に何が出来るんだとばかりに、冷たかった団員たちが、彼の一生懸命さを見る中で、心を開き、仲間として迎えてくれた最大の瞬間。彼は思わずハグして、ありがとうと。本当に嬉しかっただろうね。
ボルドさんの奥さんが着せてくれたモンゴルの英雄の衣裳とメイクで、颯爽と舞台へ。その後のほんの数分の芸だったけれど、初めの姿からは想像もできないくらい綺麗にかっこよく芸をこなして退場した。あの時のボルドさん及び団員たちの喜びは、庄司さんにとって何よりのプレゼントになっただろう。
終わった後にインタビューでは、「日本の馬乗りが良かったわ。今度は友達を連れて見に来るわ。」
「面白かったよ。また見に来たいね」と反響は上々だ。サーカス団の人々も、とても喜んでいた。彼の功績は、彼が思っている以上にとってもとっても大きかったんじゃないだろうか?
腰にヘルニアの持病があると知ったのは、番組も終わりの事。だけど、画面上からは、その欠片も分からなかった。明るくて、ちっとも辛そうに見えない。でも、テレビで映っているのはほんの一部なんだろうから、実際には、どれだけか辛くて大変な日々だっただろうなぁ…って思うと、なんだか彼がとてもかっこよく見えた。
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